・こんな形の対話っていうのは初めてかもしれなですね。
そうだね。だいたい話をすること自体久しぶりだよね。
じゃあ、質問させてください(笑)。
・生まれてから一番最初の記憶ってどんなものですか?
普通、インタビューってのはバンド結成のいきさつとかから始めるんじゃないの?
まあいいや(笑)。
一番最初の記憶というより、憶えている一番最古の記憶ってことでいいかな?
私は、夢見がちな子供だった。
夢はいろいろ見ていたよ。
柵につかまって、その柵が折れて下に真っ逆さまに落ちる夢、
男に追いかけられて水溜りに嵌る夢、象に鼻水をかけられる夢…。
ろくな夢じゃないな。
けど、憶えているのはそんなもんだね。
ああ、今思い出したよ。
たぶん、最古の記憶は、足こぎ自動車の玩具に乗っているものか、
母親のおっぱいをしゃぶっていてオヤジに怒られたもの、
「死にたくない」といって泣いていたもののどれかだな。
小さい頃から死にたくなかったのは、父方の祖母の死と関連があるのかもしれないね。
よく憶えてないけど、台所で死んだんだ。
たぶん、2歳か3歳のときだと思う。
・多くの人は、「自分はあの頃、今の自分の原型ができた」とかいう時期があると思うんですが
今のレッドサンの「原型」ができたのっていうのはいつ頃ですか?
「死にたくない」って言ってたあたりからかもしれないね。
自分というものは、鏡の向こう側にしか見えないものだろう?
他人は、見ることができるけどさ。
そういうところから、自分は他人とは違うっていう観念が生まれてきたんだろうね。
逆に考えれば、他人にすごく興味があったのかもしれない。
いずれにしても、子供の頃は不安が多かったな。
多分に、「宗教的」な子供だったかもしれないね。
私の志向ってのはたぶん、3歳くらいからほとんど変わっていないよ。
教えてあげようか。
いや、やっぱりやめておこう。今回は質問多そうだからね(笑)。
・いや、教えてください(笑)。レッドサンの「志向」ってどんなものなんですか?
いまいち普段の姿からは見えてこないもんで…。
そうだな…、人間はいずれ自らの死と直面する。
生まれ変わり理論は魅力的だが、記憶がなくなるんならあまり嬉しくないよな。
もっと魅力的なものは、自分が選ばれた者であるという考えだ。
生まれる前から選ばれているわけだから、死を恐れていてもしかたがない。
自分と他人の明確な違いは何だと思う?
私は自分の目や耳、鼻や触感で人や物に接しているわけだが、
他の人の志向はわからない。
推測はできるようになってきたけどね。
死ななくてはいけないのに生きている自分がいるわけだ。
その中で私一人が自分をコントロールすることができる。
もちろん外部の影響を受けながらね。
つまり、私の宿命は、選ばれし自分がいかに外部と折り合いをつけながら生きていくか、ということになると思う。
だから、志向のタイプとしては、私を支配する神は一人。
そして、その呪縛から逃れることはできないので、
しかたがないのでなんとかやっていこう、という種類のものかな。
これでわかるかい?
・人生に大きな影響を及ぼす重要な要素のひとつ、恋愛についてお聞きしましょう。
これまで、一番印象に残っている恋愛経験ってどんなものですか?
恋愛経験ってのは少ないんだろうね、たぶん。
でも、誤解を恐れずに言ってしまえば、
すべての女性が恋愛対象といってもいい。
会ったり、話をしたりしたすべての女性に対して、恋愛感情を持っているよ。
まあ、この質問の答えとしては、忘れられないほど惨めになって泣き崩れたり、
跪いたり、その後立ち直るのに半年とか1年とか必要としたのかってことなんだろう?
そんな経験をしたことはない、とは言わないけどね。
・恋愛というものは人生のすべてとは言わないまでも、
その人間について一番よく現している部分だと思うんです。
たしかにわかりやすい部分ではあるだろう。
恋愛は人間の弱点だ。
つつかれると痛いし、その痛みは第三者にとっては蜜の味ってわけだな。
恋愛について語っていい思いが出来る奴って幸せな奴だと思うよ。
というよりハッキリ言えば馬鹿だ。
結局、恋愛について語るということは自分自身を見るってことになるんだろうし、
その行為はマスターベーションに近い。
詳しく話してもいいけど、それは別の機会に、
「レッドサンのマスターベーション論」とでも題して披露してあげるよ。
・恋愛にも通じることだと思うんですが、自分が他人ととる距離、
つまりレッドサンの他人へのスタンスってどんなものなんでしょうか?
人それぞれだから、答えようがないな。
エルビス・プレスリーに対するスタンスと、エルビス・コステロに対するスタンスは違うよ。
自分と、他人の距離ということであれば、たとえ、シックスナインになったとして
でも、それ以上深いとしても、相手と同化したいとは思わない。
ボブ・ディランの“All I Really Want”という歌があるんだけれど、
その歌詞は「君を○○○しようと思っていない。本当に僕が望んでいることは君と友達になることだ」
というものだ。
私が望んでいることも、そういうことだよ。
・コンプレックスはありますか?
また、あればそれは今の自分にどんな影響を及ぼしていますか?
コンプレックスは限りなくあるよ。
目上のアホな人間に対するコンプレックス、同年代のリッチな奴に対するコンプレックス、
尊敬する人に対するコンプレックス、肉体的なコンプレックス、性的なコンプレックス等々。
コンプレックスがあるから、何かしなくちゃと思うんだろうね。
なかったら仙人のような生活ができるだろう。
そうそう、私の目標は仙人になることなんだ(笑)。
そういう意味では、コンプレックスを一つ一つ消化していくことが、私の目標ってことかもしれないな。
・他人をコントロールしようという意志を時々感じますが、
それはいったいな何故なんでしょうか?
そんなこと思ったことない。
もしそう見えるとすれば、コントロールされたい人間が多いってことじゃないのか?
私はサービス精神が旺盛なんだよ。(笑)
大体において、私は人と接するとき、
その人が一番望んでいるようにしようと努力をしているつもりなんだ。
逆に、その人が一番望んでいないことも察するという訳かな。
でも、おそらく、その最も望んでいないことは裏を返せば一番望んでいることかもしれない。
だから、時にはキツ〜い一発をかましているようにみえるんじゃないかな。
それが、コントロールしようとしているように見えるのかもしれない。
自分では意識してないけどね。
・レッドサンは幼い頃から「死」について考えをもっているようですが
実際、自分について考えてみると、どんなふうに生涯を閉じたいですか?
死に際ってことかい?
別にどうでもいいっていえばどうでもいい。
ついこの間、妻の弟が死んだんだ。
子供2人残してね。
突然のことで、それはショックだった。
そのときに思った。
死に際ってのは自分では選べないんだよ。
私の生涯は2時間後かもしれないし、20年後かもしれない。
少なくとも今は死にたくない。
死ぬとすれば、人知れず死にたいけどね。
それは、家族がいれば不可能なことだ。
誰かが悲しむのは私の望んでる生涯じゃない。
だから、私はやっぱり仙人になって、
何か宝物の番人でもしていたいね。
その宝物を、インディ・ジョーンズに手渡して、
生涯を閉じる、ってのがいいかな。(笑)
・残念ながら、スパイ大作は空中分解してしまいましたが
あなたにとってスパイ大作とはどんなものでしたか?
いや、スパイ大作は過去形ではない。
これからがあるかはわからないが、終わってはいない。
スパイ大作は、ひとつのバンドだ。
私の全てではないけれど、自己表現の場の一つってことだね。
そういう意味では、ho-gasもバンドだし、スーパーノリ塗りマシーンもバンドだ。
バンドっていうのは、一人じゃない。
複数の人間が何かをすること、それを人に見てもらうってことなんだ。
だから、プロレス団体もバンドなんだ。
スパイ大作には希望を持っている。
もちろんバンドだから一人ではできないことだけどね。
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