鈴木パイジが贈る!

スパイ大作メンバーインタビューPART1

Root Of BAND

レッドサン(+ステレ男) 聞き手・進行=鈴木パイジ


--BANDを結成したいきさつを教えてください。

アカムスコ
「ああ、そうだな…。
まず、メンバー全員、元々同じ会社に勤めていて、
会社帰りに飲みにいってバカ話とかしてた連中なんだ。
あるとき、もつ焼き屋「松楽」で、BANDやろうという話になった。
そのときに飲んでいたメンツが、BANDのメンバーってことだ」

ステレ男
「5人いたんだけど、残ったのがメンバーになったという…。
まあ、うまく集まったよね。
ダイナマイトがドラムやりたいっていったので決まりだったね。
体型的にもぴったりだったし(笑)」

アカムスコ
「5人?後一人って誰だっけ?」

ステレ男
「そりゃ、パンパース立川に決まってるじゃない!
オレらの本気に対して、オソレをなして逃げ出したんだよね!」

アカムスコ
「そんなノリなので、実際にはメンバー以外にも、ダンサーやマネージャーも
いるらしいんだけど、本人がどう思っているのかは知らない(笑)。
メンバーの中で、楽器弾けるのが私だけだったから、とりあえずバンマスとかいわれてるけど、実際にはオレがリーダーシップをとって活動してたわけじゃないんだ。
むしろ、実際のリーダーはステレ男じゃないかな。
なぜか解雇されてるけど(笑)」

ステレ男
「ああ、もう疲れちゃったんだよ。
バンマスはバンマスじゃないとかいってるけど、空中分解の原因はリーダーシップの欠如だな。
まあ、エゴのぶつかり合いみたいなバンドだったからね。
人間関係に疲れた、これが解雇というか脱退の一番の原因。
まあ、ギターもロクに弾けなかったけどね(苦笑)。
そう、オレはスパイ大作のブライアン・ジョーンズなのよ(笑)」

アカムスコ
「コースケ・サンタマリアじゃないの?」

ステレ男
「この中途半端な冗談になんと答えればいいのか…?」

アカムスコ
「他のメンバーがどうしようと思っているのかとか、
みんなの意見を調整しようとか、面倒なことをするのは本意じゃないというか。
オレはオレのやりたいことだけを勝手にやってるんだ。
他のメンバーがやりたいことには協力はするけどね。
ただ、演奏は勝手にできない。
このHPはすべて私が自分勝手に作ってる。
メンバー全員が見てるのかもわからないし、別にかまわないんじゃない?」

ステレ男
「ほら、これだ(笑)。
HPはね、個人活動だから、まあいいんだけど…」

--音楽の原点ってなんだったのでしょう。

アカムスコ
「オレが生まれる以前、家は洋服屋だったらしい。
生まれた頃は、オヤジの代になってなぜかスポーツ用品店だった。
その後、ものがわかるようになったころは中華屋だった。
中華屋の奥でバーを経営していたんだ。
当時のバーってのは、今のキャバクラとはちょっと違って、
カクテルとか、ジュークボックス、ってイメージだった。
音楽の原点は、ジュークボックスだな。
お気に入りは、そうだね…、ジュンとネネ、ピンキーとキラーズ、いしだあゆみ、
ブルーコメッツ、北島三郎。(笑)
あと“小指の思い出”これはだれだっけ?」

ステレ男
「それは伊東ゆかり」

アカムスコ
「いずれにしても、いわゆる、流行歌ってやつだな。
このへんの流行歌のルーツを探ってみると、
案外とワールドミュージックに行き着くところがあるよね。
当時の日本の流行歌って殆どパクリ元があると思う。
わかりやすいよ。
オリジナリティーがあるのは北島三郎くらい?」

ステレ男
「そうなの?(笑)」

アカムスコ
「JBがオリジナリティーがあるとすれば、それくらいの評価をしてもいいんじゃないかな。
いずれにせよ、ジュークボックスがあったのは3歳〜8歳くらいまでのこと。
その後は、バーは人に貸してしまった。
音楽の流行りも、変わってしまったような気がするね。
もしかすると、音楽が変わったんじゃなくて、
家の経済状態が変わっただけなのかもしれないな。
その後、中学生になって、母親がステレオを買うまでは、
“オレ音楽”っていう意識はなかった。
今と違って、音楽は贅沢品だったね。」

--音楽は贅沢品ですか?自然に耳に入ってくるものでは?

アカムスコ
「自然に耳に入ってくるものじゃないよ。
音楽ってのは、お金を出して買うもの。
ラジオから流れてくる音楽を聴いているだけでは、
“オレ音楽”じゃなくて、“ソレ音楽”だろう?
自分の好きな音楽を聴くためには、それなりの代償を払わなくてはならない。
お金、時間、スペース…、本当の貧しさの中に、音楽の入り込む余地はない。
自分の好きな音楽が聴けるんだから、貧乏じゃないんだってことさ」

ステレ男
「オレの場合、両親が音楽を聴く趣味がなかったから
音楽は自分で掴み撮らないといけなかった。
ラジオやテレビでは、全米トップ40モノなんかは聴いてたけど、
まあ、レッドサン的な“オレ音楽”は、高校生くらいの時だったかな?
ストーンズの“ハーレム・シャッフル”とか、ガビーンてきたね」

アカムスコ
「私が最初に買ったストーンズのレコードは、”レット・イット・ブリード”。
ビートルズの”レットイットビー”のパロディーだな。
暗いアルバムだ。
その後、”サム・ガールズ”を買って、ファンになった。
コミック路線を走り出したんだよな。
理想的なBANDだと思うよ。
「リスペクタブル」なんか、いいよね。

ステレ男
「“サム・ガールズ”はオレも持ってるよ!
オレ的には、う〜ん、“ビースト・オブ・バーデン”が好きだね」

--学校での音楽の成績は?

アカムスコ
「音楽の授業は嫌いだったし、成績は悪かったよ。
リコーダーを吹くのが嫌で、金魚の水槽の裏に笛を隠して学校に行ったよ。
それでも学校にある汚い笛を吹かされるから同じことなんだけど。
自分の声も嫌いだったしね。
クラシックを聴く分には苦痛ではなかったけど、
音楽の先生ってのは多分に変態が多いと思うよ。
でも、あるとき、通信簿で5をとったな。
筆記テストが100点だったし。
これは、ある法則が解ればだれでも100点取れる問題だったんだけど。
あるとき、突然、リコーダーが上手くなっていたんだ。
これは、“オレ音楽”って意識と共に、なんだよな」

ステレ男
「オレは授業中に大騒ぎして、1をとったことある(笑)」

--“オレ音楽”ってなんでしょうか?

アカムスコ
「オレが主催する音楽、オレが提供する音楽、
いや、違うな…、オレを代弁する音楽ってとこかな。
あまりいい表現が思いつかないけど」

--最初に買ったレコードって何ですか?

アカムスコ
「“タイガーマスク”だ。
自分の小遣いで最初に買ったのは、“岩崎宏美ロマンチックコンサート”。
そのなかで、ロバータ・フラックの“やさしく歌って”がよかった。
岩崎宏美は素晴らしい歌手だと思うよ。
でも、“センチメンタル”の後、“ファンタジー”という
レコードを出すんだけど、そこで私の盛り上がりは無くなってしまった。
ああ、もう処女じゃないのね、って思ったよ(笑)。
実際にはどうだったか知らないけどさ」

ステレ男
「“およげタイヤキくん”」

---自分の小遣いで買ったのですか?


ステレ男
「スマン! オフクロに買ってもらった!」

--それらのレコードが“オレ音楽”の原点ということ?

アカムスコ
「いや、それは“オレ音楽”じゃない、“オレの憧れ音楽”だ。
オレ音楽の原点は、サイモンとガーファンクルになるかな。
私の兄が、カーペンターズのファンで、その反発があったんだな。
ビートルズは同級生が聴いていたので、それも反発していた。
そういう意味では、クイーン、キッス、ディープ・パープル、
ELO、ストーンズなんかも同様だね。
S&Gのファンが周りにいなかった、ということが重要だったんだ。
誰か他の人間が聴いていたら“オレ音楽”にはならなかっただろうね」

--その後、“オレ音楽”はどう発展していくのでしょう?

アカムスコ
「私の場合、極めて秩序正しく発展しているんだ。
S&Gの流れからボブ・ディラン、ボブ・ディランの流れからパンク・ロック、
パンク・ロックの流れからワールド・ミュージック、
ジュークボックス・ミュージックに帰ってくるというわけさ」

--ストーンズの影響を感じますが、それはどこの流れなんですか?

アカムスコ
「パンク・ロックだ」

ステレ男
「はあ?!」

--ストーンズはパンクですか? 一部のファンは怒るかもしれませんね。

アカムスコ
「”サム・ガールズ”はパンク・アルバムでしょう?
キース・リチャードはオヤジのような親近感があるから好きだな。
ストイックで、真面目で、気が弱いからね。
これが一番怒られるか?(笑)
才能のある音楽家だと思ってるよ。

いずれにしても、パンクの原点はボブ・ディラン。
ここから話を始めないといけないんだろうな。
”ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム”が
最初のパンク・ロック・アルバム。
ボブ・ディランはフォークの神様じゃなくて、パンクの教祖だった。
だいたい、パンクって、
セックス・ピストルズがデビューする前からある言葉だよ。
一つのカテゴリーにするのはいいけど、間違った型にはまってるね。
パンクだからって、髪の毛ツンツンしてる必要はない。
ツンツンしててもいいけど。
本質は音楽なんだから、ファッションじゃないでしょ。
日本人が、出っ歯でメガネかけて、カメラを首にかける必要がないのと同じだ。

--ロバート・フィリップに関する記述が多いような気がしますが。

アカムスコ
「ロバート・フィリップ(キング・クリムゾン)は“オレ音楽”じゃない。
演奏したい音楽じゃないし、演奏するテクニックがない。
そういう意味で、岩崎宏美と同一線上かな(笑)。ただ、好きなギタリストだね」

--岩崎宏美は、“セクシャル・リスペクト”なのではないんですか?

アカムスコ
「ああ、そうだった(笑)。いや、でも、どうだろう…。
私が“セクリス”しているのは、デボラ・ハリー、ビョーク…。
ああ、かなり多いな…、ドリー・パートンだってセク・リス対象だし。
皆それなりにセクシャル・リスペクトしてるかもね。
女性アーティストは、女性だから好きだという所があるな。
男に関しては、そのへんが欠落しているかもしれない。
ニューハーフ系、デビッド・ボウイなんかは、“セク・リス”かな?
自分に投影して、自分に同化するものが“オレ音楽”なのかも。
だから、エルビス・コステロなのかもしれないな。
ロバート・フィリップは同化できないから、北島三郎と同一線上か?」

--話を元に戻しますけど、パンク・ロックってなんでしょうか?

アカムスコ
「流行歌だ。たとえていうなら…、格闘技じゃないし、
芸術でもない、スポーツでもない。
いわばプロレスだ。
なんでもあり、だけど、ひとつのルールがある。
それは、明るく、楽しく、そして激しい、ということかな。
ジャイアント馬場はこう言ってたんだよな、違った?」

ステレ男
「違う気がする…」