出版社時代の日常 – なりゆき主夫のリアルな日常 – 楽天ブログ(Blog)

昔の話でございます・・・
それは、ジャイアント馬場が亡くなって間もない頃、ジャンボ鶴田が引退し、三沢が退団、新団体設立という流れを知らない人にとっては、それなりに感慨深い頃の話?である。
私は出版社で働いていた。
出版社といっても、週刊誌や文庫本を作っている訳ではなく、行政に関する広報物の編集をする会社といったほうが判りやすいだろうか。
最近、官庁関連の不祥事がワイドショー等で取り上げられているが、そのような堅い?商売であるった訳だ。
私はそんな会社の、情報システム事業部係長だった。
情報システム事業部といっても、名詞に書かれた表向きの名前である。
実際には営業部第2課の係長だった。
何をしていたのかと言えば、ようするにホームページ作りましょう!と外回り営業をしていたのだ。
そんな私の優雅な日常。
朝、PCに向かい、熱いコーヒーをすする。
後輩の村井っちに昨日の反省。
「おまえ、お客さんと話している最中に、たまごっちにエサをやるのをやめろ!」
「はい」
「なんでたまごっちにエサをやってはいけないかわかるな?」
「はい、想像はつきます、でも、たまごっち死んでしまうと大変なんです」
「たまごっち死ぬのと、おまえのサラリーマン人生が死ぬのとどっちが大事だ!」
「わかりました・・・」
と、いいながら、母に作って貰ったオニギリを、勤務中にむさぼり食う男である。
こいつは結婚して、子供までいるのだが・・・
何故妻ではなく、母の手作りおにぎり毎朝食ってるのかは不明。
羨ましい・・・そうでもないか!
ま、どうでもいいのだが。
そんなたまごっちが、「穂高さん、今日の予定を教えてください」と言う。
私は手帳を見ながら、言う。
「今日は荻窪を経由して銀座に出る。その後、御茶ノ水、水道橋、そして直帰の予定だ」
「わかりました」
私は、地域行政に関わる機械化問題メーリングリストへの書き込みを終えた。
旬な話題は、プレイステーションでDVDが見られるって本当なのか?という話であった。
私は、ファミコンしか盛ってないので判らないと書いた。
顔文字つきで。(^_^;)
村井っちに尋ねた。
「調べはついたか?」
「はい、いくつか」
「いってみろ」
「え?、先ず荻窪でしたら、駅前に食べ放題1500円があります。また、どっちにしても新宿経由しますから、そこでモーモーパラダイスってのもアリかと。また、銀座には先日行ったイタリアン、それと、タイ料理ですね、でも、実は私、ここに行って見たいんですよ」
「なんだ?」
「ちょっとルートにはないんですけど、渋谷に出来た、回転寿司の食べ放題、60分980円」
「・・・微妙に時間が短いな」
「そうですが、元々昼休みは1時間ともいえるんじゃないかと・・・」
「それもそうだな!ま、場所がちょっと問題だが・・・行き先を変えるか!」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、元々クライアントとは約束なんかしてない」
「さすがですね」
「うむ・・・」
しかし、こういう会話を大声で話していると同じフロアーで仕事している人間に必ず嫌われる。
確かに言えることは、こういう会話は、会社を出てからするべきだということ。
天真爛漫では、社会人は難しいのだ・・・
とりあえず、今大事な事。
昼は渋谷に行くことである。
「おお?!!ケーキ回ってますよ!から揚げもある!」
村井っちは狂喜している。
「バカ!それは店の策略だ!ケーキやから揚げのように脂肪の多い食品を食わせれば、寿司食えなくなるだろ!」
「でも1個だけ食いたいっす」
「そんなもん、オレが決める事じゃねーだろが!自分で決めろよ!」
「穂高さんは大人だなぁ?・・・」
リアクション取り難い会話だ。
しかし、こんなアホにかまっている時間はない!
私はとにかく、普通に寿司が食いたいだけだ。
先ずは赤身である。
赤身がよければ、ほぼ全てがOKだ。
ひし形の高野豆腐のように、スポンジ状に凍ったマグロの赤い身が、小さい俵型オニギリに乗っているように見える。
見た目的にはかなり得点は低い。
とにかく、味わって見なくてはわからない。
舌に乗せた瞬間に滴る鉄分の味わい。
一口噛むごとに広がる、熟成された冷凍庫の香り。
そしてほんのりと暖かく、鼻に酸味が上ってくる柔らかい白米との融合。
ジュワ?・・・
水っぽくてマズイ!
ということは・・・
赤身がマズければ、ほぼ全てが駄目だということである。
から揚げには関係ないことかもしれないが・・・
ま、980円で食い放題だから、仕方がないか!
しかし、マズイ寿司を急いで食うというのは、あまり楽しい行為ではない。
酢の加減と、しょう油の甘さが微妙に、気持ち悪くなってくる。
オレは、騙されているのかも・・・
20皿でギブアップだ。
「もうだめっす!」という村井っちは、ケーキとからあげもしっかり食っている。
「うまかった?」
「最高っす!」
「よかったね?・・・でも、この店たぶん潰れると思うよ」
「ええ!なんでっすか?」
「オレはもう来たくないもん」
「ええ?!穂高さんってグルメだからなぁ?!僕は全然OKっすけど、駄目っすか?」
「駄目っす!」
考えてみれば、散々食っておいてダメだしってものあんまりだが。
妥協を許さないのがプロなのだ!!
その後、この店が潰れたかは知らない。
でもまあ、ほぼ間違いなく潰れていると思う。
何故か?
渋谷の食い物屋、年数に違いはあっても、ほぼ間違いなく潰れることになっているのだ。
渋谷は家賃が高いのだ。
と、いうウンチクを村井っちに話す。
「さすがは穂高さんっすね!すごいなあ?!」
そういわれると、まんざらでもない私は村井っちよりもアホかもしれない。
腹が苦しくなりすぎて、仕事したくなくなった私たちは、後楽園に行って馬券を買った後、会社に直帰の電話を入れて、プロレス観戦する事にしたのだった。
こんなことして、私は会社を辞めました・・・

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