腰曲がりノリ塗り師匠 – なりゆき主夫のリアルな日常 – 楽天ブログ（Blog）

工場の朝は、８時半に始まる。
私は自転車通勤で、８時ちょっと過ぎたくらいに工場に着き、作業着に着替える。

工場長や、仕掛け出しの半蔵は必ず先に来ているので、「おはようございます！」と挨拶する。
工場長「おう」
半蔵「・・・」

半蔵、ちょっと不気味である。
仕事のない時でも常に焦って動いている。
私はなるべくかかわらないようにしていた。
外に出て、タバコをふかしていると、

リッキーさんがやってくる。
リッキーさんは私が入ってきたことにより、２階でパートのおばちゃん達と下ごしらえチームになった。いいのか悪いのか、不明・・・

パクさんがやってくる。
「おはようごじゃいます」
「おはようございます」
韓国では「ざじずせぞ」の発音はないらしい。
難しいのだそうだ。
パクさんは私より１歳年上で、日本人の奥さんがいて、子供も２人いた。
私もビワを保育園に入れようと思っている話をすると、「ここはいっぱい空いてるよ?ガラガラだよ?」と言った。
「え、本当ですか？うちの地域では抽選待ちですよ」
「人住んでないよここ、ガラガラだよ?」
「う?む、いいな?」
「人住むところじゃないよココ」
「う?む・・・（汗）」
そうこう話していると、日本人の職人軍団がやってくる。
「いよぅ」

腰の曲がった職人さんが、私の師匠である。
何故師匠かというと・・・
たぶん自分で私の師匠だと決めたから。
ま、ありがたいことではある。
実際、ノリ塗りが芸術的に上手かった。
それで腰が曲がったのだとすると、私にとってもちょっと嫌な症例ではあるが。
「どうだおめえだいぶ慣れたか？」
「はい、なんとか、おかげさまで」
「まあよ、あせらねえでこの調子でやってけばなんとかなるもんだからな」
「そうですか」
「職人ってのはな、結局は腕だからよ」
師匠はニヤッと笑った。
「大きな声じゃいえねえけどよ、この会社じゃよ、おめえ俺が一番これが多いんだよ」
師匠は指で銭マークを作った。

「そうなんですか？」
師匠は真顔になった。
「あたりめえだよ、俺はな、あの社長知ってんだろ？あのチャビンよ、あれと工場長二人でよ、テーブルの上に金積んで、お願いだから来てくださいって言うからよ、しょうがねえからここで仕事してやってんだ、他の連中とは違うからよ」
「は?・・・」
師匠は再びニヤッと笑った。
「だから俺は指図はうけねえしよ、辞めてもいいんだよ、かまやしねえよ」
「そうですか」
「この仕事はよ、腕がしっかりしてればよ、どこでも食ってけるから」
「はい」
「おめえにも教えてやるから、あせらないで頑張りな」
「ありがとうございます！よろしくお願いします」
「おい、もう時間だぞ」

職人Ｂが言った。
我々は持ち場へ行き、チャイムが鳴るのに合わせてスタンバイするのだ。
先ほど呼びに来た職人Ｂ、小声で囁く。
「おい、腰曲がりのいうこと間に受けちゃダメだぞ、あんないい加減な野郎はいねえよ、ありゃあタダのバカだ」
「そ、そうなんですか？」
「あたりめえだよ、バカ、おめえもバカっていってみな」
「いや、それは・・・」
職人Ｂは、後ろを向いている腰曲がり師匠に向かって「このバカ！」という。
「な、耳が遠いから、聞こえてねえよバカ！」
「や、やめてくださいよ?」（汗）
腰曲がり師匠が振り向いた。
職人Ｂが言った。
「肩にゴミがついてるぞ」
腰曲がり師匠はニヤ?っと笑って言った。
「おい、このエアーハンマーをよ、股間に当ててよ、バリバリってやったら気持ちいいよな？」

私は言葉を失った。
職人Ｂさんのいう通りだと思った。
関わるのはやめよう。
仕事以外では・・・
そしてコンプレッサーが入り、機械のスイッチが入り、チャイムに合わせて、
バリバリバリバリ！
と爆音が響き、流れの工程が始まる。
１０時半の休憩まで、エンドレスで。
つづく・・・
ランキングにぽちっとお願いします。(^^ゞ