「いかがですか?とてもいい物件だと思います」
「ああ~そうですね、とてもいいと思います、でも実際のお部屋を見てからじゃないと・・・」
「ねえ、あなたもうちょっと早くならないの?私も彼女が気に入ったのよ、出来ればこの方と契約したいから、内装工事を早く済ませられないの?」
「ええ??私がですか?」
岡本の耳元で囁く
「おだまり!」
「・・・」
あなた・・・え~と、坪内さん?いいのよ、勿論、すぐに契約しましょうなんて私はいわないわ。でも、不動産屋さんも、次のお客さんに紹介しなくてはいけないから、だってそうでしょう?彼のお仕事がなくなってしまうものね(笑)だから、彼には私から待ってもらうように話したわ。次に来られるのはいつかしら?
「私はいつでも構いませんけど、都合がつくのでしたら水曜日の午前とか」
「ええ、大丈夫、私が何とかさせるわ。大丈夫よね?岡本さん」
「え?ああ~・・・なんとも・・・いや、なんとか」
「じゃああなたは水曜日にもう一度いらっしゃいよ、ねえ?今日は岡本さんが急に来るっていうものだからバタバタしているけど、水曜には一緒にお茶を飲みましょう?」
「はい・・・ありがとうございます」
「で、あなたはどうなのかしら?」
「・・・ちょっと待ってください」
品川、岡本を引っ張って行き、ひそひそ話
「おい、いったいどうなってんだよ」
「なにが?(汗)」
「あっちは勝手に話進めてるけどさ、オレの物件はなに?あれってリビングだろ?」
「そうだよ?」
「・・・」
「気に入らないの?」
「いや・・・何で、10畳の部屋と同じ値段な訳?広さは?3倍か?何か裏があるよな?」
「だから、さっきも言ってたんじゃないの?料理を作るのが好きならって」
「まさか、お抱えコックって訳じゃないよな?」
「それは知らんっていうか、契約条項には入らないでしょ?」
「・・・」
「飯は作るかもしれないけど、1階にもここと同じ広さのリビングがあるし、そこを共同で使ってるんだから、普通に考えればここは占有スペースって考えられないか?」
「だって何もないにしては良すぎだよね」
「・・・・だからお前に勧めてんじゃん」
「・・・わかった・・・いまいち信用出来ないが・・・一応お前を信用するか。騙したらタダじゃおかないからな」
「・・・(汗)」
「どうかしら?田無さんでしたっけ?」
「品川です。一応、いろいろとお聞きしたいことが・・・」
———– 中略 ———–
場所変わって賃貸不動産「ハウスクイック」前。
「じゃあ、坪内さんは水曜日に」
「はい、今日はどうもありがとうございました、じゃあまた、よろしくお願いします」
「どうも・・・おい、本当に大丈夫なんだろうな?」
「何が?お前ってそんなに心配性で気の小さい男だったの?オレだってあそこの大家と親戚でもなんでもない、ま、父の知り合いだけどさ、個人的な付き合いもないんだから知らないよ!ただオレからすれば、純粋におすすめ物件だと思ってお前に紹介しているだけだよ?あんな物件他に出てこないけどね~気に入らないんなら、いいんだよ別に、他の人に回すだけだからさ」
「いや・・・気に入らないとは言ってない、そんなに良いのはオカシイっていうか、お前がそんなにいい人間だと思ってなかったし」
「・・・」
「今日は、これから忙しいの?」
「あ、ああ・・・書類とか、いろいろ・・・ああ、この物件も、他の不動産屋にも回ってるんだけど、契約済で回さないといけないんだよな」
「わかった・・・正直、学生時代からお前はせこい奴だと思っていたんだけど、感謝するよ、ありがとう。そのうちおごるよ、じゃあな」
「ああ・・・(おごってくれるとは思わんが)じゃあ、銀行振り替え用紙だけちゃんと送ってくれよ、引き落とせないから」
「わかった~・・・」
「・・・・」
「ま、いっか!」