脱構築
光は実家の近くのアパートで独身者のような生活を送り、休みの日は新しい彼女と、ウタコと一緒に出かけていった。娘夫婦には子供が生まれ、長男の嫁も妊娠した。
既に花子は彰子が養子縁組していた。
それは美佐子が裁判を起こしてウタコを連れ去ることまで...
再結合
チョコレートペーストが飛び散り、大きく真っ黒なシミをつけた壁を、ウタコの荷物を取りに来た彰子は見た。
その石膏ボードには、いくつも穴が空いていた。
キッチンの窓は割れていた。
食べ物カスが散らかって床は見えなくなっていた。
光の言うこ...
再結合
チョコレートペーストが飛び散り、大きく真っ黒なシミをつけた壁を、ウタコの荷物を取りに来た彰子は見た。
その石膏ボードには、いくつも穴が空いていた。
キッチンの窓は割れていた。
食べ物カスが散らかって床は見えなくなっていた。
光の言うこ...
解体
彰子は、娘夫婦と暮らす中での光と美佐子、その連れ子のウタコとの生活が苦痛ではなくなってきたのと同時に、そのことが本人たちのためにはならないと感じていた。ただ、それを言い出すキッカケが中々なかった。
そんな中、彰子の息子、長男が結婚するとい...
既定の概念
光と美佐子の結婚は無理だと思ったが、誰もそのことを指摘しなかった。
それを指摘していれば、何かが変わったのかも不明だ。
「皆で頑張れば、なんとかなる」
家族はそう考えることにした。
この概念は、「皆で頑張らなかったら、うまくいかない」と...
ウタコ
光が連れてきた美佐子の赤ん坊は、生後3ヶ月の女の子だった。
ほとんど書き込みのない母子手帳に、美佐子の元夫の苗字の後に、カタカナで名前が、「ウタコ」と書かれていた。 毎朝、光はウタコを抱えてやってきた。
彰子は言った。
「美佐子さんは家...
overture-序曲
何の前ぶれもなく、光は自分の実家に生後数ヶ月の赤ん坊を連れてきた。 光の母である彰子はその赤ん坊を一目見て、自分の遺伝子が含まれていないことを悟った。小さい頃の光にも似ていないし、光の最初の子供、最初の嫁に引き取られた彰子にとっての初孫にも...