プロローグ その12 継母未満 – なりゆき主夫のリアルな日常 – 楽天ブログ(Blog)

彰秀は10年来の会社を突然辞めて来た。
元々、結婚のために、義両親の体裁のために、決めてきただけの堅気の仕事だった。
色々なことがあり、途中で辞めることが出来なくなっていたのだ。
ローンを組み、新居に移り住み、子供も出来た彰秀にとって、今の仕事を続ける必要はなくなった。
その前に、辞めることが出来なかった訳ではないが、同居している段階で、その勇気はなかったのだ。
予定以上に長く続けたせいで、多くのことに無理が生じていた。
彰秀も、光彦ほどではないにしろ、借金を作っていた。
全てのしがらみを切り捨てて、マイナスからでもいいから、やり直したかった。
最初、洋子は彰秀を許せなかったが、10ヶ月の失業期間で、徐々にやり直す気になった。
彰秀の失業給付が終了する寸前に、次の仕事が決まった。
今度の仕事は自転車通勤で、毎日弁当持参で、酒を飲まずに真直ぐ家に帰った。
子供と住居という意味以上に、彰秀の生活態度は変わった。
花子や太郎に対しては、一月に数回遊んでくれる、単なるオジサンとオバサンになってしまった。
花子や太郎も人が経験していないようなことも経験しているし、積み重ねておくべき部分に関しては抜け落ちていることが多々あった。
花子や太郎の素行の悪さを先生に注意されたことを雅子に相談されても、「仕方がないこと、大して心配することじゃない」と言った。
それは所詮、自分の子供のことではなく、他人事となっていたのだ。
自分達のことで、精一杯だった。
光彦は、知り合いの資産家で、医者だというパートナーと組んで、金融会社を設立したという。
金が回るようになった光彦は、実家の近くにアパートを借りていた。
光彦は、彰秀に焼肉屋で仕事の話をした。
彰秀にはチンプンカンプンだったが、金融業は彰秀がやりたいと思うような仕事内容ではないようだった。
とにかく体に気をつけること、子供にとって何がいいのかを考えるようにと言った。
光彦は、彰秀の焼肉代を払って、「ご自由にお持ちください」とレジの横においてあったガムを、箱ごと全部持って帰った。
光彦には付き合っていた彼女がいた。
光彦は、彼女を連れて、子供達を遊園地に連れて行ったり、家族を外食に招待した際、彼女も同伴させた。
花子と太郎も、この「おねえちゃん」が好きだったようだ。
雅子はこの「おねえちゃん」を認めなかった。
やはり水商売の女だし、チャラチャラした服装は美佐子や前妻と共通だった。
美佐子よりは愛想が良かったし、年齢は上のようだったが、既に光彦も若くはなかった。
いずれにしても、雅子は美佐子の時と同じ目には会いたくなかったのだ。
美佐子は自分のやりたいように生きて、覚醒剤で身を破滅させていっただけでなく、子供に虐待までした。
家族をかき回すだけかき回して、縁を切って行ったのだ。
感情的には、一生許せない。
この「おねえちゃん」には関係ないが、この女だけが、光彦が今まで連れてきた女と違うなんて考えられる訳がなかった。
雅子も、洋子も、その「おねえちゃん」を無視した。
彰秀は、「そんなにまで無視しなくてもいいんじゃないか?」と言った。
しかし、雅子の「既定の概念」の中では、「光彦の新しい嫁」に関する項目は、「書き込み不可」になっていた。
雅子にも、洋子にも、血のつながりのない子供と一緒に暮らすということが、この「おねえちゃん」に出来るとは思えなかった。
実際にどう考えているか判らないし、揺れ動いているのかもしれない。
だからといって、自分達から一緒になることを勧めることは出来ない。
向こうからどうしてもというなら一つ一つ辛い現実を確認させてもらう。
自分の子供はどうするのだ。
子供が出来たら、花子と太郎をどう思うのだ。
その時に、自分達との関わりをどうするつもりなのだ。
それらが理解出来ないくらいなら、途中で投げ出すのが判りきっている。
勿論、美佐子はどうしてもといった挙句、平然と「出来ない」と言った。
そんな女だとは思わないが、「おねえちゃん」に覚悟が出来てるとも思えない。
そして美佐子は離縁したとはいえ、出所してきたら、必ず来る。
その間に入ったら、「おねえちゃん」はそれだけで必ず苦しむだろう。
そこまで持ってからでも遅くはない。
とにかく、お互いに苦労するなら、歩み寄って優しい声をかけてあげる理由はないのだ。
既に、美佐子や前妻の時のような、好き嫌いの問題ではなかった。
光彦は、洋子に新しいワゴン車をプレゼントした。
いつも子供達がお世話になっているから、この車でまたどこかに連れて行ってくれということだった。
花子が家に来た頃買った、中古のワゴン車はもう寿命だった。
洋子の仕事でデザイン展示会の会場に、そのワゴン車で搬入した時、花子と太郎、雅子を連れて光彦は来た。
洋子達が光彦と会ったのはそれが最後となった。
つづく
この話はフィクションです。
登場人物も、団体も実在しません。
ですから、こいつはなに考えてんだとか、許せないとか、こういう描き方は酷いとか、よくわからんとか、ご意見、または要望等ありましたらコメントお寄せくださいますよう、お願いします。
適宜に?今後の展開に取り込ませていただきます・・・
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