Atypical Ways 非定型の道

転園

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私は幼稚園を一度替っている。
最初の幼稚園は、教会のある幼稚園であった。

「賛美歌を歌うのが嫌」で通えなくなって普通の幼稚園に移したという。
しかし、納得のいかない部分の一つに、兄はその教会のある幼稚園ではなく、私が転入した先の(Typical=典型的な)幼稚園に通っていた。
私の親は何故、「賛美歌を歌うのが嫌」になったという幼稚園を私の入園時に選択したのだろう。

とにかく私には、何故だか判らないのだが・・・最初の幼稚園の記憶は全くない。
何一つ、憶えていない。
本当に、通ったのか、園内はどうだったのか、先生は?園児は?全く覚えていない。

そして、次に転園した先の幼稚園の初日、母に手を引かれてその幼稚園の門をくぐって2~3歩の、母と自分の姿はまるで写真を撮ったかのように覚えている。

実際に映画かテレビのワンシーンがあったのかもしれないし、誰かが写真を撮ったのかもしれない。
私は自分と母を少し離れた数歩後ろの門の外あたりから、自分たちが歩いているのを見ていたのだ。
モノクロではなく、カラーで。

母は右手で私の左手を握り、私は紺のベレー帽にスモックのような黄色い割ぽう着のように被るタイプの制服を着せられ、肩から青いお弁当かばんをかけ、不安に慄いていたというよりは、一つの堪忍をしたかのように神妙な面持ちだった。

母はベージュ系のツーピースで、普段のかっぽう着姿とは打って変ってフォーマルな印象に化けていた。
その時の母はテレビで日本国民に手を振る美智子妃のようであった。

私はクラスの先生の隣に立ち、その園の私より数日、あるいは数ヶ月「先輩」の子供たちに紹介された。
実際には先生の横で他の子達に紹介される私を、私は左斜め上空から見ていた。

先生は優しそうに見えた。
たぶん真面目な人だったのだろう。

私は先生という職業の人が何をする人なのか判っていなかったので、とりあえずこの人は味方になってくれる人なんだと思った。

しかし同じ歳の「先輩たち」は私に対し敵意をむき出しにし、一部の子は野獣のように歯を剥き出して睨み付けていた。

ムーミン谷のミイのような鼻をした女の子が近寄ってきて、言った。
「あんたより私のほうが背が大きいんだらね」

私はこの新しい幼稚園という場所で緘黙になった。

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