私は生まれついての『天然パーマ』だった。
また、私は鼻が高い子供だった。
天然パーマで鼻が高い子供でいる間、プラスになることは一つもなかった。
私は、閉鎖的な日本の地方のコミューンにおいて、生まれついた外見的にAtypical(非定型)だった。
私は誰の子でもないような気がした。
実際に憶えている訳ではないのだが、2~3歳の頃、私をつれて歩く母に警察官が「この子はインド人なのか?」と訊ねたらしい。
母もそれについてどう思ったのかは知らないが、定型の日本人的発想があるとしたら、自分がお腹を痛めて産んだ子供がインド人に間違えられた際に、喜ぶのだろうか悲しむのだろうか、あるいは、「たしかにそう思う」と納得するのだろうか。
私は子供の頃、インド人は知らなかった。
知識的にはこの程度。
インドじゃないけど。
いずれにしても、後にそのエピソードを聞かされた私本人はそれが慰めになっただろうか。
父方の祖父は少しパーマがかっていたという。
しかし、現存している仏壇の写真は、ハゲだった。
何の証拠もないことを信じる馬鹿がどこにいるのか。
私は犬猫のように捨てられていた子だと思った。
拾われてきたことを感謝しなくてはいけないのか。
大人になったらカッコよくなってみんなに羨ましがられるからと言っては、母は私の髪の毛を伸ばそうと毎朝櫛で梳かしつけた。
髪の毛がブチブチと切れた。
「痛い!」
「だって梳かさないとグチャグチャだから」
「痛いよ!なんでグチャグチャじゃいけないの!」
判っていた。
カッコ悪いから梳かしているんだ。
私だって好きでこんな髪型になった訳じゃなかった。
「髪の毛を梳かせばウエーブが出るのよ」
私のアイドルは石立鉄男だった。
しかし、彼がドラマの中で、頭にカーラーをつけているシーンがあって、私は少なからずショックを受けた。
なんでわざわざ変な頭にするのか理解出来なかった。
髪の毛に係わる私のニックネームは、ゴア、やきそば、タイガージェットシン、サリーちゃんのパパ、鬼など。
ゴアを知らない人は「マグマ大使の敵」として検索してほしい。
天然パーマだった人間と遭遇したのは、小学生の頃、銭湯で、おそらくどこかのブルーカラー系労働者だと思うが、比較的若そうな男だった。
彼は、「オレも天然パーマなんだよ」と私に話しかけた。
そのおにいちゃんはカッコよくはなかった。
しかし、同じ傷を持つものと思ったのに違いない。
その後も銭湯で会えば「オウ」などと声をかけてくれた。
その人も、流れ労働者だったのか銭湯で会うのはそんなに長い期間ではなかった。
私の田舎において、天然パーマで生まれる確率は、「発達障害の出現率」よりも低かったことは間違いなかったと思う。