プロローグ その9 太郎出産 – なりゆき主夫のリアルな日常 – 楽天ブログ(Blog)

美佐子は予定日よりも数週間早く生まれた男の子の名前を、レオにするか、ラン丸にするかを、雅子に相談したが、雅子は両方とも反対した。
結局この赤ん坊は、昔からある名称、「太郎」(仮名)と名づけられた。
太郎は保育器に数週間入っている必要があった。
未熟児だったが、大きかった。
花子の妊娠中はどうだったのかは知らないが、美佐子は太郎の妊娠中もタバコは吸う、酒は飲む、薬は飲むと全く健康に気をつかわなかった。
そんな美佐子に対して雅子は厳しく怒ったつもりだったが、実際にどの程度気をつけていたのかは判らないし、結果的に未熟児出産ということになったのかもしれないと思っていた。
とにかく、太郎が五体満足で生まれたことは嬉しかった。
初めての孫ではないが、現時点で唯一の孫だ。
花子も可愛いが、意味合いはちょっと違った。
太郎のパーツの一つ一つが、光彦に似ているような気がした。
その嬉しさを、隠すことは出来なかった。
太郎が退院して、家に来てから、雅子の溺愛対象は花子から太郎に移行した。
花子も最初のうちは赤ちゃんに興味を示していたが、雅子の態度の変化を感じ取って、太郎は自分にとってのライバルだと悟った。
花子は、太郎の顔の上に枕を乗せた。
それに気づいた雅子は花子を叱った。
花子は泣いた。
花子の面倒をみる役は、雅子の娘夫婦、洋子と彰秀の担当になった。
といっても実際には二人とも仕事をしていた。
雅子が子育てのチーフであることに、変わりはなかった。
花子もそれを受け入れた。
花子は案外と、物事にたいして執着のない赤ん坊だった。
泣いても、何時までも泣いていることはなく、しばらくすると忘れてしまうようだった。そんな花子は手のかからない赤ん坊だったのだ。
むしろ、太郎は手がかかった。
ミルクを飲みすぎて吐く。
ヨダレは常に垂れている。
雅子は、光彦の最初の子供も同じだったと思った。
その腹違いの兄の赤ん坊の時に、嫁に言っても無視されたこと、自分が遠慮して出来なかったことを、太郎にはしてやろうと思った。
美佐子は太郎が生まれてしばらくして、「仕事に行く」と行った。
雅子にはいくつかの感情があった。
・借金を返済するために、光彦は勿論、美佐子にも働いてもらわなければ困る。
・自分が産んだ子供が可愛ければ、美佐子は仕事にはいけないと思う。
・光彦が働いているんだから、美佐子は家事をするべきだ。
・でも、自分は太郎が可愛いし、美佐子がいなくてもかまわない。
・むしろ、出来るだけ太郎の面倒を見たい。
・でも、自分が「無償」で、利用されたのではたまらない。
・自分は、子供の「母親」ではないのだ。
・いずれにせよ、こんな家族形態は「既定の概念」ではない。
雅子は、光彦と美佐子に、「二人の子供の面倒をいつまでも見ることは出来ない」と言った。
美佐子は「いつまでも見てもらうつもりはない」と言った。
美佐子は子供を、保育所に預けて仕事に行った。
結局、迎えに行けない美佐子の代わりに雅子が保育所に迎えに行くと、暗い部屋でボーっとテレビを見せられている子供達数人の中に、花子の姿を見つけた。
雅子は、一時的であれば、子供の面倒を見るのは仕方がないことかもしれないと思った。
ただし、それはあくまでも、「既定『外』の概念」であった。
つづく
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あ?、それから、この話はあくまでもフィクションです。
登場人物も、団体も実在しません。
ですから、こいつはなに考えてんだとか、許せないとか、こういう描き方は酷いとか、よくわからんとか、ご意見、または要望等ありましたらコメントお寄せくださいますよう、お願いします。
適宜に?今後の展開に取り込ませていただきます・・・

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