職人、いや、工員になったといった方がいいのか。
とにかく私は再び給与所得者となった。
給与所得は多かれ少なかれ安定しているので、生活設計が立てやすい。
ただし、それに慣れると不測の事態に陥った時にとてつもなく苦しむ。
それを踏まえて、日頃から対策を立てておくべきである。
なんてことを言うと・・・
こんな商売やってたみたいかも。
(実際やってた時期もあるが・・・ま、それはいずれ、ネタにする時がくるかも)
いずれにしても、給与を支払われるということは、それなりの職務をこなすからというか、利益を上げるために雇われているという前提がある。
つまり、いくら雇われ人が頑張っても、会社として利益が上がらなければ人件費というものは邪魔者以外の何物でもないのだ。
ただ、そこそこ利益もあり、使える剰余金が生じている場合・・・
時に人件費というものは、妙な使われ方をするような気がする。
靴工場で働く企画や営業の昼食は、大抵外食である。
私も以前の仕事ではそうだった。
しかし、職人、パートのオバちゃんたちは、食堂で弁当を食うのが日常。
弁当持参するか、給与天引きで仕出し弁当を食うか。
私も妻に弁当を作ってもらった。
こんなかんじで、毎日。
職人A、私の弁当をじ?っと見た。
そして、「いいよな、カミサンが作ってくれる人はよ?」と言う。
「いや?」
「っていうかそれで足りねえだろうがよ」
「いや、でもこれ、どんぶりめしですからかなり入ってますが」
職人Bは言った。
「若けえんだから足りねえだろう?それじゃよ。最近の若けえ連中はカッコつけてるからな、ちょっとしか食わねえんじゃねえのか?」
職人Cも話に交じってくる。
「最近の若けえのはダメだよ、ほれ、あの韓国人、あいつは揚げ物食えねえんだよ、情けねえよな、だから根性がねえんだよ」
「あれもそうだよな、フィリピンもダメだ」
「あ?あれは論外だ!冗談じゃない!」
実は韓国の師匠もフィリピンの師匠も食堂では食べない。
この辺りは食事情の違いということかもしれないが・・・。
深く追求するべきかは不明。(汗)
とりあえず・・・
私は食べるのが早いほうであったが、職人の中ではかなり遅いほうであった。
早食い職人は弁当食い終わるのに約1分。
私自身はこのベラベラ喋くっている職人ABC軍団と歩調を合わせるので必死だった。
約5分。
熱いお茶も一気飲み。
なんでそんなことしなくてはいけないんだ?・・・
答えは、「業に入らずんば業に従え」という諺である。
「その点おめえはよく食うからいいよ、食っとかねえとよ、もたねえだろ、な、夜までよ」
「いや?そうですね・・・」
まさにどうでもいっか!という話に付き合わされる訳である。
で、昼食を食い終わると・・・
職人ABCと共に上階にエレベーターで昇る。
夕方には納品する靴でいっぱいになるスペース(単なる床)は、昼休み中は空っぽだ。
そこにダンボールを広げて、寝るのである。
「あ?最高だな」
「ダンボールはいいよな」
「ダンボールはいいだろおめえ」
「いいですね・・・(汗)」
勿論皮肉交じりではあるが、すべてがこの調子であるから適宜に話を合わせられなくてはこの世界で生きていけない。
(だから若者は生きていけないのか)
職人A
「ところで穂高くんよ?。おめえいくら貰ってんだ?」
「え?いや?大したことはないですっていうか(汗)」
「25万くらいか?」
「え、いや?そうですね、っていうかまだ実際には貰ってないし、よく判らないんですけど(滝汗)」
「そうか?おめえもオレと対して変わらねえよ、ひでえよな?この会社はよ」
「そ、そうですか?(汗)」
「そうだろうがよおめえ、そんな給料でカミサンと子供の面倒見られねえだろうがよ?だからオレは結婚出来ねえっていうかよ、実際に面倒みられねえだろうがよ?」
「いや、わからないですけど(汗)」
「あたりめえだろうがよおめえ、生きていけねえぞ、おめえはまだ子供が小さいからいいけんどもよ、やっていけねえっての」
「そうですよね?(汗)」
「そうだよおめえ?っていうかよ、うるせえから寝られねえだろうがよ!黙れよ!」
職人Bが言った。
「うるさかったら耳栓買えってんだよてめえの持ち物じゃねえだろうがよこのガマガエルが!」
という横で職人Cはガマのようにイビキをかいて寝ていた。
「穂高くんよ、こいつの言うことなんか聞いてんじゃねえぞおめえ、嘘ばっかりだからな、こいつは子供もカミサンもいるんだけどもよ、逃げられただけだからな、マネするんじゃねえぞおめえ」
「マネしませんよ?」
「っていうか寝ろよ」
「は・・・・」
昼休みはこんな感じであった。
実際問題とすれば、私は同年代の経験者よりも2万円くらいは安く見積もらせてもらうという約束で入社していた訳だが、年功序列ではない何かが勿論ここにはあったようだ。
やっぱりこれか??
次は真面目に、婦人靴について書くかも・・・
次回につづく・・・
続きに興味があったらぽち!ってことで。