職人の皆さん、さよおなら – なりゆき主夫のリアルな日常 – 楽天ブログ(Blog)

残った仕事は大した量ではない。
考えてみれば、大した仕事量がないから会社は潰れるのかも。
そんなことはあまり考えていなかったが。
10時半の休憩時間に工場長に呼ばれた。
ウスラハゲ
「君は・・・ちょっと残ってくれないか?仕事が終わっても帰らないで、ちょっと待っててくれよ」
「・・・・はい」
工場長が行った後、職人たちが寄ってきた。
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「なんだ?なんて言われた?」
「いや、帰らないで残れって」
「そうか・・・・・」
実質的に私と職人達とで交わした最後の会話である。
師匠が寄ってきた。
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「残れって言われたのか?・・・なるほどな。ま、もしかしたらお前にとっていい話かもしれねえからよ、言われたとおりにしたほうがいいぞ。とにかくな、仕事があれば、めっけもんなんだ、いいか、こいつら、みんな明日から食えねえぞ、おまえはこいつら全員の面倒みられるほど甲斐性があるのか?ねえよな?先ずは自分のことを一番に考えろよ。こいつらはおめえの人生に大して役にたたねえ。忘れな」
師匠もまんざらアホではなかった。
というよりも、こういう状況で落ち着いている師匠は、本当に、「いつクビになってもいい」と思ってたことが立証されたということか。
ここでようやく、私は職人の皆さんと完全に一線引かれた自分がいることに気づいた。
「裏切り者のスパイ」は、私自身だったのだ!
ミッション・インポッシブル(スパイ大作戦)
仕事が終わると、職人達は帰り支度を始めた。
あっという間に工場内はガラーンとしてしまった。
工場長が道具を捨てようとしているので、私はすかさず、支給されたけど結局殆ど使う事がなかった、ワニと包丁をカバンの中に入れた。
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貴公子さまが支度をして、降りてきた。
「帰れないか?」
「うん・・・待っててくれって言われてるからね」
「弁当持ってるね、一緒に食おうヨ」
私たち2人は工場の前の道端で、弁当を広げて食べた。
「・・・もしかしたら、君は仕事あるね?よかたじゃない?」
「いや・・・だって全然わからないよ、今は」
「待たされるのも、大変だよ」
「貴公子さまは・・・これからどうするの?」
「ボクは、保険入ってるから、オ金がすぐ出るヨ。毎日荒川で釣りするよ。(笑)その後は、体丈夫、心配ないね、カミさんも仕事ある、なんでも出来る。それより、キミがはっきりしないで大変だね」
「ありがとう・・・でも、たぶんオレも、なんとかなると思うよ」
そんな話をしていたら、工場長がやってきた。
「じゃあ、ちょっと事務所行ってくれ。(貴公子さまに)お前はまだいたのか。早く仕事探せよ」
「オカネもらうんだよ、すぐ働かないよ!」
工場長に叫んだ後、貴公子さまは私に言った。
「じゃあ、また荒川で会おうヨ!」
「そうだね、じゃあまた!」
それ以来、貴公子さまと会うことはなかった。
つづく・・・
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